北海道の日本酒の特徴
かつては日本酒造りに不向きとされたこともあったが、酒造好適米の開発や技術の向上により、全国的に知られる名酒も生まれている。特に、1975年に生まれた「国士無双」は、淡麗辛口の火付け役となった日本酒として知られる。また、旭川の男山株式会社は、御免酒「男山」を醸造していた「木綿屋山本本家」の正当継承蔵となっている。
北海道で生まれた酒米には、「吟風」「彗星」「きたしずく」などがある。
青森県の日本酒の特徴
青森の清酒は、2025年に地理的表示(GI)指定を受けた。その味わいは、コクの津軽、キレの南部と大まかにとらえられることがある。全国的に知られる名酒が複数あるが、中でも「田酒」は、1980年代に大人気となり、今でも、純米酒の代名詞のような存在になっている。
青森県で生まれた酒米には、「華吹雪」「華想い」「吟烏帽子」などがあり、「まほろば吟酵母」などの、まほろば酵母シリーズの開発もある。
岩手県の日本酒の特徴
岩手の清酒は、2023年に地理的表示(GI)指定を受けた。日本三大杜氏の一つ「南部杜氏」は、花巻市を拠点とする。濃醇甘口の良酒が多いのも、岩手の日本酒の特徴である。中でも「南部美人」は、海外でも知られる銘柄となっている。
岩手県で生まれた酒米には、「結の香」「吟ぎんが」「ぎんおとめ」などがある。酵母の開発も盛んで、「ジョバンニの調べ」「ゆうこの想い」などが広く使われている。
宮城県の日本酒の特徴
淡麗辛口の良酒が多い宮城県は、1986年に「みやぎ・純米酒の県宣言」を行っている。2015年には、県内の7酒造が「DATE SEVEN」を結成した。第一次地酒ブームをつくった「浦霞」や、「無鑑査本醸造辛口」「すず音」が全国的なブームを巻き起こした「一ノ蔵」など、全国に知られる名酒が複数ある。また、「伯楽星」を醸す新澤醸造店は、1%を切る精米歩合を実現した蔵としても知られている。
宮城県で生まれた酒米には、「蔵の華」「吟のいろは」がある。浦霞(株式会社佐浦)は、きょうかい12号酵母発祥蔵として知られている。
秋田県の日本酒の特徴
美酒王国を謳う秋田は、山内杜氏の秋田流低温長期発酵により、なめらかで優しい口当たりの日本酒が多い。秋田県産地呼称清酒認証制度とともに広がった県産のAK-1酵母は、きょうかい1501号酵母となった。次世代を見据えた取り組みとしては、若手蔵元が結成した「NEXT5」も注目されている。全国に知られる酒造も複数あり、中でも、きょうかい6号酵母発祥蔵の「新政」は特筆に値する。
秋田県で生まれた酒米には、「秋田酒こまち」のほか「一穂積」「百田」がある。現存最古の「きょうかい6号」を有するだけに酵母開発熱も高く、「AK-1酵母(秋田流花酵母)」のほかに「AKITA雪国酵母」などがある。
山形県の日本酒の特徴
2016年に日本酒としては初めて、県単位で地理的表示「GI山形」の指定を受けた。吟醸王国を謳い、フルーティーでやわらかな口当たりの良酒が多い。中でも「十四代」は、端麗辛口の酒に代わって1990年代にブームを巻き起こしたことで知られる。また「出羽桜」は、1980年代の吟醸酒ブームを先導している。山形県研醸会を組織し、県全体で技術向上に取り組む体制も整い、「山川光男」といった4酒造のコラボ酒なども生まれている。
酒米には「出羽燦々」「出羽の里」「雪女神」があり、出羽燦々で醸した純米吟醸酒は審査会を通して「DEWA33」の称号が与えられるなど、純正山形酒審査会が、山形ならではの日本酒造りに力を入れている。
福島県の日本酒の特徴
南会津と喜多方の清酒は、2024年に地理的表示(GI)指定を受けた。福島県全体では、全国新酒鑑評会で金賞受賞数日本一を複数回獲得し、2012酒造年度からは9連覇という偉業も達成している。これは、「高品質清酒研究会」での酒蔵交流が主因となっている。また、福島県酒造組合が運営する「清酒アカデミー」もあり、日本酒造りに対する熱意にあふれる県である。
酒質は一般に、芳醇・淡麗・旨口とされる。全国に知られる名酒も多く、生酛造りの代名詞のような存在である「大七」や、無濾過生原酒のジャンルを切り開いた「飛露喜」がある。
酒米には「夢の香」「福乃香」、酵母には「うつくしま夢酵母」「うつくしま煌酵母」がある。
茨城県の日本酒の特徴
個性豊かな純茨城の酒を生み出すために、2003年から、ひたち錦と茨城県産酵母を使用した地酒「ピュア茨城」を売り出している。また、常陸杜氏認定制度を立ち上げ、製造技術者の育成と酒質向上に取り組んでいる。2019年度には、「いばらき地酒ソムリエ認定制度」を立ち上げ、茨城県産日本酒の認知度向上を計っている。日本最古と言われる1141年創業の須藤本家を抱える県でもある。
茨城県初のオリジナル酒造好適米である「ひたち錦」は、すっきりした味わいの良酒となる。酵母では「ひたち酵母」、明利酒類の「小川酵母(きょうかい10号酵母)」や来福酒造の「花酵母」などが知られる。
栃木県の日本酒の特徴
2014年に「とちぎの地元の酒で乾杯を推進する条例」が施行された栃木県。2006年には、独自の下野杜氏認証制度ができた。酒質は濃醇甘口と評されることが多く、全国的に名前の知られた銘柄もそろっている。中でも「仙禽」は、ドメーヌ化のパイオニアとして、全国の酒造にも大きな影響を与えている。
栃木県の酒米としては、「とちぎ酒14」「夢ささら」が知られる。酵母は「とちぎ県酵母」という形で開発されたものがあり、「T-F」「T-ND」などがある。
群馬県の日本酒の特徴
利根沼田の清酒は、2021年に地理的表示(GI)指定を受けた。群馬の酒米「舞風」を使ったオール群馬県産日本酒には、「舞風」ラベルが貼られる。awa酒協会を結成した永井酒造は、群馬県の酒造である。
群馬県の酒米は「舞風」、酵母は「群馬KAZE酵母」がよく知られている。
埼玉県の日本酒の特徴
埼玉県の日本酒出荷量は全国でトップ5に入る。2005年には「彩の国酒造り学校」が開校し、技術者の育成にも力を入れている。酒造としては、全国初の全量純米蔵となった「神亀」や、近年大人気となっている「花陽浴」を醸す「南陽醸造」などがある。
埼玉県の酒米では「さけ武蔵」が知られており、酵母には「埼玉G酵母」などがある。
千葉県の日本酒の特徴
千葉県優良県産品推奨協議会の審査を通過した商品には、千葉県推奨酒のシールが貼られる。中でも、県産米を使用した清酒には、「ちばの酒技酒調」というシールも貼られている。独自の高温山廃酛で知られる木戸泉酒造は、南総の酒造である。
酒米には「総の舞」があり、酵母には「手児奈の夢」がある。
東京都の日本酒の特徴
明治時代に64の酒造があったとされる23区内に、2011年にようやく1軒、「東京港醸造」が復活した。東村山市には、桃の節句の白酒を定着させたとも言われる「豊島屋酒造」がある。新しい形の酒蔵を模索する動きがある。
酵母には、明治時代に醸造試験所で分離された「江戸酵母」がある。
神奈川県の日本酒の特徴
主に丹沢山系の水を利用する。神奈川県酒造組合の統一銘柄に「神奈川物語」がある。神奈川県酒造組合後援のイベント「ヨコハマ サケ スクエア」が開催されている。
新潟県の日本酒の特徴
日本三大杜氏である越後杜氏の発祥地であり「酒の国にいがた」と呼ばれる新潟県の清酒は、2022年に地理的表示(GI)指定を受けた。「淡麗辛口」といえば、まず新潟の日本酒が挙げられるほど、現代では日本酒の一大産地として認識されている。県内の日本酒に対する思いも強く、新潟清酒産地呼称協会が新潟独自の日本酒を認定し、「NIIGATA・O・C」ラベルを貼りつけている。また「新潟清酒達人検定」「新潟清酒学校」を設けて、後進の育成にも努めている。1960年代の地酒ブームを切り開いた「越乃寒梅」など、有名銘柄が複数あり、日本酒生産量では全国3位となっている。
新潟県で生まれた酒米では「五百万石」がよく知られ、東の横綱とも呼ばれている。また、山田錦と五百万石を掛け合わせた「越淡麗」もある。新潟県オリジナル酵母としては、「五泉市酵母」などがある。