8月話題の日本酒【生酛 和井田】雄町サミット新設部門の最優等賞

燗酒部門での初代最優等賞に輝いた岡山の日本酒

2025年8月7日にホテル椿山荘東京で開催された「第16回雄町サミット」において、今年初めて燗酒部門が設けられました。この背景には、近年再び注目されつつある「燗酒文化」の再評価があります。冷やして飲む日本酒が一般化した現代において、温度によって広がる酒の魅力を再発見しようという動きが広がっているのです。そのような中、この新設部門の最優等賞に輝いたのは、三冠酒造(岡山県倉敷市)の「生酛 和井田」でした。

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燗酒部門新設の意味

雄町サミットは、日本酒業界でも特に酒米「雄町」に特化した品評会として知られています。吟醸酒や純米酒などの部門に加え、2025年からは燗酒部門が加わりました。これは、雄町米の持つ旨味やふくらみが、温度変化によってどのように表現されるかを評価するための新しい試みです。燗酒は、温度帯によって香りや味わいが段階的に変化し、特に米の個性が際立つ飲み方といわれます。新設部門は、こうした日本酒本来の多様な楽しみ方を広める契機となっています。

「生酛 和井田」の魅力

今回最優等賞を受賞した「生酛 和井田」は、岡山県産雄町米の中でも、倉敷市真備町和井田地区で栽培された米のみを使用しています。和井田地区は水はけの良い土壌と昼夜の寒暖差に恵まれ、力強く旨味の詰まった雄町が育つ産地として知られています。その米を生酛造りで醸すことで、酸味と旨味のバランスが絶妙な、奥行きある味わいが生まれました。

燗にすると、米の甘みと旨味がふくよかに広がり、酸が心地よいキレを与えてくれます。特にぬる燗から上燗にかけての温度帯では、穏やかな香りとともに旨味が一層際立ち、食中酒として料理との相性も抜群です。一方で、この酒は冷やしても非常に美味しく、ややシャープな酸味と透明感のある口当たりが楽しめます。冷やすことで、燗とはまた異なる爽やかな印象が引き立ち、四季を通じて多彩な飲み方が可能です。

雄町米と燗酒の相性

雄町米は1859年に岡山市で発見された日本最古の純系酒米で、そのふくよかな旨味と深いコクから、燗酒との相性が特に良いとされています。粒が大きく心白がしっかりしているため、温めても酒質が崩れず、むしろ温度によって味わいが柔らかく膨らむ特性を持っています。「生酛 和井田」も、その特徴を余すところなく引き出した一本といえるでしょう。

燗酒の復権とこれから

近年、燗酒は年配層だけの楽しみ方ではなく、若い世代や海外の日本酒ファンにも広がりつつあります。温度を変えることで一杯の酒が全く別の表情を見せる魅力は、まるでワインのデカンタージュや熟成のような奥深さがあります。今回の燗酒部門新設は、こうした楽しみ方をより多くの人に知ってもらうための大きな一歩です。

「生酛 和井田」は、冷やしても、燗にしても、その魅力を余すところなく堪能できる希少な一本です。雄町米ならではの奥深い旨味と、生酛造りによる力強さが織りなす味わいは、季節や料理を問わず楽しめます。今回の受賞は、燗酒の新しい可能性を示すだけでなく、日本酒の多様な魅力を再確認させてくれる出来事となりました。


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