加舎白雄が詠んだ酒の俳句
酒造を営んでいた坂井家八代目坂井鳥奴は、明和四年(1767年)冬、加舎白雄と対面している。白雄は、明和四年から六年にかけて信州を遊説し、姨捨長楽寺境内に芭蕉の「おもかげや姨ひとり泣く月の友」を句碑とし、記念集に「おもかげ集」を出版した。

ひととして酒のみならへ夜のうめ
酒くさき人に蝶舞すだれかな
酒星を見に出て蛙きく夜かな
夕空や凧見に出し酒の醉
出かはりの酒しゐられて泣にけり
桃の日や下部酒もる蒸鰈
瓶に酒いづこはあれど家ざくら
餅酒に慍じて春の野づらかな
風ひとふき酒にけぶれる松の花
庭中にあるじ酒くむ接穂哉
薄くれや酒けしめさる青すだれ
老ふたり花たちばなに醉泣す
世をままに隣ありきやさうぶ酒
いざやとて燗酒に交し菖蒲酒
御田植の酒の泡ふく野風かな
木のもとや松葉にちぎる田植酒
蚊に酒を吸さん夜半か蚊屋の月
たかむしろ酒したむ事を禁じけり
冷し酒旅人我をうらやまん
酒くまむあまりはかなみ枝の露
世ははかな電光石火酒酌ん
早稲酒にもののゆかしき在鄕哉
早稲酒に垂打ばかり醉てけり
酒造る隣に菊の日和かな
黄に咲ぬ酒卸ゆく門の菊
菊や咲我酒たちて五十日
菊の酒にちからある日の雨寒し
葉生姜や手にとるからに酒の事
酒桶に千鳥舞入あらしかな
すかさずや道に酒賣帰り花
加舎白雄ゆかりの日本酒
【雲山】
雲山のブランドを持つ坂井銘醸の八代目は俳諧師でもあり、加舎白雄に教えを請うた。坂井銘醸は、加舎白雄館を併設している。
