時代を先取りした「氷」の音:「りばいばる」と日本酒の進化

中島みゆき「りばいばる」

9月になり、少しずつ秋の気配を感じる今日この頃。この季節に聴きたくなるのが、1979年9月21日にリリースされた中島みゆきの名曲「りばいばる」です。この曲には、何度聴いてもハッとさせられる一節があります。

「酒に氷を浮かべて飲むのが好き」

このフレーズは、ただの歌詞を超えて、当時の日本酒文化を考えると非常に興味深いのです。1979年という時代は、今のように日本酒を自由に楽しむ文化はまだ定着していませんでした。多くの人にとって、日本酒といえば「熱燗」か「冷や」が一般的。氷を浮かべて飲むというスタイルは、ほとんど知られていなかったと言ってもいいでしょう。

【中古】中島みゆき りばいばる / ピエロ
1979年9月21日に発売された中島みゆきの7作目のシングル。B面に「ピエロ」。オリコンシングルチャートでは最高順位11位をつけ、1980年度年間では61位を記録。ジャケットには中島みゆきの少女時代の写真が使われ、30万枚以上を売り上げている。後に研ナオコもカバーしている。

九頭龍「氷やし酒」

しかし、近年では、ハイボールやサワーといった「酒ハイ」ブームの影響もあり、日本酒に炭酸や果物を加えたり、ロックで楽しんだりする新しい飲み方がすっかり定着しました。この流れの中で、日本酒を氷で割る「オン・ザ・ロック」も、もはや珍しいものではなくなりました。
まるで、40年以上も前に中島みゆきが歌い上げた一節が、時を経て現実のものとなったかのようです。時代の先を行く感受性が、酒の楽しみ方にも反映されていたのかもしれません。

そして、この「オン・ザ・ロック」の日本酒を語る上で、ぜひ触れておきたいのが福井県の銘酒「九頭龍」です。九頭龍の造り手である黒龍酒造では、その中でも特に、氷を入れて楽しむことを推奨している日本酒があります。「氷やし酒」です。
「黒龍・冷酒」をリニューアルする形で、2021年夏に登場したこの日本酒は、力強い味わいが、氷が溶けるにつれてまろやかになり、繊細な香りが引き立っていきます。味わいが刻々と変化していく様は、まさにグラスの中で小さなドラマが生まれているかのようです。

九頭龍 氷やし酒
夏季限定で黒龍酒造から蔵出しされる「氷やし酒」。1997年まで発売していた「冷酒」を、オンザロックでも楽しめるようにリニューアルしたもので、アルコール度も18%と、通常の日本酒よりもやや高めになっている。時間とともに味わいが変化して行くのも楽しい。

「りばいばる」を聞きながら、グラスの中で氷がカランと鳴るたび、その音は時代を超えて私たちに何かを語りかけてくるようです。崩壊した愛が突然よみがえったという曲のテーマと重なり、「氷やし酒」が胸にしみるのです。
秋に飲む日本酒には、しみじみとした物語があります…

日本酒を飲みながら聞きたい音楽

中島みゆき作品コンプリートには、研ナオコが歌った「りばいばる」があります。

おいしい日本酒を飲む時代がやってきた!