秋の夜長に聴くビートルズ|日本酒とブリティッシュ・ロックの交差点

The Long And Winding Road

十月に入ると、酒の苦みが強くなります。そんな時、ザ・ビートルズの「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」に針を落とします。

この曲の、どこか物悲しいメロディラインと、ポール・マッカートニーの情感豊かなボーカルは、祭りの喧騒が去ったこの季節には、ことさら心に染み入ります。人生という「長く曲がりくねった道」の途中で、この曲は、来た道を振り返らせるものとなっているのです。

日本酒を飲みながら聞きたい音楽

「曲がりくねった道」と酒の過ち

特にお酒を飲んでいる時は、普段よりも感傷的になりやすいものです。若かりし頃は、この「曲がりくねった道」が、文字通り現実の風景になってしまうほど、酒に呑まれてしまった時期がありました。真っすぐ歩いているつもりでも、体はいうことを聞かず、足元がおぼつかなくて、舗装された道までもが「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」のように曲がりくねって見えた、あの頃の失敗。今となっては懐かしくも、少し恥ずかしい思い出です。しかし、そんな経験も含めて今の自分がいる、と思えるようになったのは、やはり時の流れと、ほんの少しの成長のおかげでしょうか。

そんな「道」の果てに見つけたのは、日本酒という奥深い嗜みです。

ビートルズが醸す、甘酸っぱい「Beau Michelle」

中でも、この秋の夜長に特に心を惹かれるのは、長野県の伴野酒造が醸す「澤の花 Beau Michelle(ボー・ミッシェル)」という一本です。この日本酒は、ビートルズの名曲「Michelle」を聴かせながら醸造されたという、なんともユニークな物語を持っています。

アルコール度数が低めで、爽やかな甘みと酸味が特徴の、まるで白ワインのような軽やかなこの日本酒。フルーティーで優しい口当たりは、日本酒を飲み慣れていない方にも大変親しみやすいでしょう。青春時代の甘酸っぱさを思わせるような味わいは、ビートルズの楽曲が持つ普遍的な魅力と、どこか通じるものがあるように感じます。

グラスに注がれた「Beau Michelle」の透明な液面を眺めながら、耳には「The Long And Winding Road」。甘酸っぱい日本酒の味わいは、時に人生のほろ苦さを、時に若かりし日の純粋な情熱を思い出させます。曲がりくねった道の途中で出会った人々や出来事、そして少し飲みすぎた夜の失敗。それら全てが、今の自分を形成している道標のように思えるのです。

この秋もまた、ビートルズと日本酒がもたらす穏やかな時間に感謝しつつ、グラスを傾けています。

レット・イット・ビー / ザ・ビートルズ
「The Long And Winding Road」は、ビートルズの事実上の解散から約1か月後の1970年5月に発売されたアルバム「Let It Be」に収録。アメリカではシングル・カットされ、ビルボードでビートルズとしては最後となる第1位を獲得した。

Beau Michelle
「澤の花」で知られる伴野酒造の日本酒。ビートルズの曲を聞かせながら仕込み、ワインのようだとも評される優しい酒質となった。ボトルも洋酒のようでカッコいい。酒-1グランプリなどで優秀な成績をおさめており、人気となっている。

おいしい日本酒を飲む時代がやってきた!