甘い汁に群がる季節

仙禽かぶとむし|少年時代がよみがえる

日本酒仙禽のかぶとむし先日、西日本新聞のネット版に、緑風氏の記事を見た。緑風氏は佐世保の人で、俳句に勤しみながら、この四月に九十四の天寿を全うしたと。そして現在、遺作に御親族がイラストをつけてツイッターに上げているのだと。
その緑風氏の俳句に、

老人に買われてゆきぬ甲虫

があった。何かと批判の声もあるカブトムシの売買ではあるが、この俳句には目から鱗である。あたたかな気持ちにさせてもらった。

さて、自分も先日「かぶとむし」を買った。こちらのかぶとむしは、駅前にいる。例年この時期に、カラフルな衣装をまとって現れる。仙禽かぶとむし
「仙禽かぶとむし」。ドメーヌ化の魁となった栃木の名門「せんきん」が醸し出す銘酒である。

コンクリートジャングルを飛び交ったあとは、この酒の甘さが、特に五臓にしみわたる。冷やしたグラスに軽く注いで、ドライフルーツと一緒にちびちび飲めば、少年時代にタイムスリップ。
一日が自然に流れたアナログ時代。夜になれば暗さがあって、様々な生物がうごめいた。そんな中、懐中電灯を片手に飛び出して、目星をつけた樹木をチェックする。そうして捕まえたカブトムシを持ち帰り、親に自慢しながらラムネを空ける。
仙禽のかぶとむしは、あの時のラムネに似ている。

▶ 仙禽かぶとむし

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