酒の俳句|与謝蕪村

与謝蕪村が詠んだ酒の俳句

「男山」を醸造する山本本家の主人は与謝蕪村の弟子で、酒一樽を贈られたことに対する書簡が残っている。この時、同時に贈られてきた川魚は腐っており、その悪臭に対する苦情も述べられている。
この他にも、各所から酒を贈られたことに対する礼状が残されているが、送られてきた酒樽は返却し、それにまた酒が詰められて送られてきたようである。蕪村は、酒に不自由することはなかったようである。

酒を煮る家の女房ちょとほれた
あま酒の地獄もちかし箱根山
愚痴無知のあま酒造る松が岡
御仏に昼備へけりひと夜酒
升飲の値は取らぬ新酒哉
いざ一杯まだきににゆる玉子酒
雲の峰に肘する酒呑童子かな
炉開きや雪中庵のあられ酒
鬼貫や新酒の中の貧に処す
主しれぬ扇手にとる酒宴哉
故郷や酒はあしくとそばの花
秋風や酒肆に詩うたふ漁者樵者
酒十駄ゆりもて行や夏こだち
漁家寒し酒に頭の雪を焼く
鮓を圧す我酒醸す隣あり
柚の花や能酒蔵す塀の内

与謝蕪村ゆかりの日本酒

【男山】
蕪村の弟子である庄左衛門の山本本家は、多くの句に詠まれた伊丹酒「男山」を醸した。明治初期に廃業してしまったのを、旭川の山崎酒造が末裔を探し当てて復活させた。蕪村の句に、石清水八幡宮を詠んだ「やぶ入や鳩をめでつゝ男山」があるが、この伊丹酒を思って詠まれたものかもしれない。