日本酒とともに味わう、サザン『バラッド3』の調べ:夏の夜を彩る、大人のための音楽体験

日本の夏は、私たちの心に様々な感情を呼び起こす。過ぎ去りし日の甘酸っぱい思い出、切ない恋の記憶、そして一抹の寂しさ。そんな夏の夜の感傷にそっと寄り添い、豊かな時間へと誘ってくれるのが、サザンオールスターズの『バラッド3 ~the album of LOVE~』であり、そして、静かにグラスを傾ける日本酒ではないだろうか。

『バラッド3』が織りなす、大人の夏の情景

2000年11月22日にリリースされた『バラッド3』は、サザンのキャリアの中でも特に円熟期に入った彼らの、深みと幅広さを増したラブソングが詰まったアルバム。初期のどこか危うげな青春の熱情とは異なり、このアルバムには、人生の機微を知り尽くした大人の諦念や慈愛、そしてそれでも失われない希望が、しっとりと描かれている。
中でも、多くのリスナーにとって“夏の思い出のテーマソング”として特別な位置を占める「真夏の果実」は、このアルバムを象徴する一曲である。1990年にリリースされたシングルだが、このベストアルバムにも収められ、どこか幻のような過ぎ去りし青春の夏を、甘く切なく凝縮している。他にも「愛の言霊 ~Spiritual Message~」のような力強いメッセージソングから、「心を込めて花束を」「JOURNEY」「素敵な夢を叶えましょう」といった温かく心に染み入るバラードまで、収録楽曲は多岐にわたる。
バラッド3~the album of LOVE~(2CD) [ サザンオールスターズ ]

日本酒が彩る、音楽との対話

俳句と俳人と日本酒『バラッド3』がリリースされた2000年頃の日本酒業界は、吟醸酒のトレンドが確立され、各蔵元が独自の個性や特徴を打ち出し始めていた時期。華やかな香りと透明感のある味わいが評価され、食中酒としても、また単独でゆっくりと味わう酒としても、日本酒の魅力が再発見されつつあった。冷やして美味しい吟醸酒の登場は、それまで「冬の酒」というイメージが強かった日本酒に、新たな夏の楽しみ方をもたらしていた。

このアルバムを日本酒とともに聞く時、甘酸っぱい思い出がひろがって行く。そう言えば、初めて「十四代」を味わったのもあの頃だった。キンと冷やしてグラスに注げば、夏は永遠に終わらないような気がしたものだ。
夏の夜風が窓から吹き込み、グラスの中の日本酒が月明かりにきらめく。流れてくるのは『バラッド3』の珠玉のメロディー。それは、単なる飲酒や音楽鑑賞を超え、五感を刺激し、心の奥底に眠る記憶を揺り起こしていく…

俳句と俳人と日本酒

おいしい日本酒を飲む時代がやってきた!