酒の俳句|高浜虚子

高浜虚子が詠んだ酒の俳句

1893年(明治26年)の子規に宛てた歳旦句に「酒もすき餅もすきなり今朝の春」がある。西山酒造場では、三代目・西山泊雲が虚子に師事したこともあり、メインブランドである清酒「小鼓」は、1914年(大正3年)に高浜虚子によって命名された。

酒もすき餅もすきなり今朝の春
二三子の携へ来る新酒かな
熱燗に焼きたる舌を出しけり
老の頬に紅潮すや濁り酒
酒旗高し高野の麓鮎の里
かりに著る女の羽織玉子酒
酒うすしせめては燗を熱うせよ
嗜まねど温め酒はよき名なり
悦びに戦く老の温め酒
老ぬればあたゝめ酒も猪口一つ
酔ひたはれ握る冷たき老の手よ
悴める手にさし上げぬ火酒の杯
失せてゆく目刺のにがみ酒ふくむ
悲しさはいつも酒気ある夜学の師
呉れたるは新酒にあらず酒の粕
白酒の紐の如くにつがれけり
曲水や草に置きたる小盃

高浜虚子ゆかりの日本酒

【小鼓】
「國の礎」を醸造していた西山酒造が破産の危機にあった時、親交のあった虚子が「小鼓」と命名した。平福百穂の揮亳ラベルで「ホトトギス」を通じて売り出して、窮地を脱したという。